障害年金受給への道のり~愛の手帳所得まで~
グループホームの支援はいろいろありますが、必要な支援制度を利用できるよう、手続きのサポートも大切です。しかし、なかなか道のりが大変なことも・・・
今回はラファミド八王子1棟の利用者様(以下、Tさん)が「障害年金の受給」を希望されたケースを通じて、ラファミド八王子で行っている手続きのサポート内容についてご紹介します。
Tさんは30歳、自閉症スペクトラム症(以下、自閉症)で、精神障障害者手帳2級をお持ちです。小学生のころにご両親が亡くなり、児童養護施設に一時保護された後、知的障害児向けの学級に通っていたこともありますが、はっきりと「知的障害」とは診断されていません。
現在は成年後見制度を利用し、ご両親の遺産と就労継続支援B型事業所の工賃で生活されています。金銭的には安定していますが、将来を考えて、障害年金を受給したいとのことでした。
障害年金は、「病気やけがによって生活や仕事などが制限されるようになった場合に、現役世代の方も含めて受け取ることができる年金」です。
初めて診療を受けたときに国民年金に加入していたか、厚生年金に加入していたかで、請求できる年金が「障害基礎年金」と「障害厚生年金」に分かれます。
昨年(令和4年)の11月頃、まずは成年後見人のY氏が対応してくれたのですが・・・
Tさんは、自閉症で「障害基礎年金」を請求しようとしたのですが、国民年金の未納期間があり、追納も不可能だったため「受給に必要な納付基準を満たしていないので、障害年金は受けられない」という結果になってしまいました。
※受給要件は以下の通り
- 初診日(原因となる病気やけがで初めて病院にかかった日)の前日において、初診日の属する月の前々月までの過去1年間において、保険料滞納がないこと。
- 20歳に達した月から初診日の属する月の前々月までの期間において、保険料納付した月と保険料免除の月の合計が3分の2以上あること。
ただし、20歳前の年金制度に加入していない期間に初診日がある場合は、納付要件はありません。
知的障害は、先天的な障害とされているので、何歳のときに診断を受けても、初診日は「出生時」=20歳前で納付要件なしになります。「知的障害と自閉症で請求すれば、受給できるのでは?」という話になりました。
Tさんは「子どものころに確定はされなかったけど、軽度の知的障害かも??」という状態なので、正式に判定を受けて「療育手帳(東京都では愛の手帳)」を取得する必要があります。
ちなみに、グループホームの利用は障害者手帳がなくてもできますし(障害福祉サービス受給者証が必要)、障害の程度によっては、ご本人も周りも気づいていないなど、診断されていなかったり手帳などを取得されていないケースはけっこうあります。
大人になって「知的障害」と言われて、ショックを受けるという方もいらっしゃいます。Tさんの場合は、知的障害であることは特に気にしておらず、「障害年金が受けられるなら、手帳を取得したい」ということでした。さて、ここからは「愛の手帳取得」に切り替えて動くことになります。
まずは東京都心身障害者福祉センター多摩支所に電話をして、愛の手帳を取得するためには何が必要か質問し、以下のように返答をもらいました。
「愛の手帳は18歳までの知能に関する情報が重要である。小学校や中学校の成績表、先生の評価、文集などがあれば判定に有利になる。なければ無いで構わないが母子手帳等もあれば望ましい。
定期通院を行っている病院の医師から、診療情報提供書(有料)を判定日までに用意してほしい。幼少期のことを知る人物に、判定日に来ていただくか、一筆手紙を書いて持って来ていただきたい」
特に子供のころのくわしい情報が用意できればよい、ということですね。
母子手帳はご本人が持っていました。しかし、もう何年も前に卒業した学校の成績表などはどうするか・・・まずは、ほぼ唯一の身内だという叔母様に相談しました。
「通知表や卒業文集等は何も持っていない。Tさんのご両親が亡くなられてから、学校のイベント等には参加していたが、くわしくは分からない。授業中に騒いだり、計算ができない等のエピソードを聞いた覚えはあるが、いつの頃だったか思い出せない。ご本人が住まわれていた児童養護施設の方がくわしいと思う」
との返答。身内とはいえ、10年20年も前のこと、仕方ないですよね・・・
次は、ご本人へ小学校から高校までの経歴を確認しました。
- 小3までは実家の近くにある「M小学校」に在籍
- ご両親が亡くなった後、小3の後半から「K第三小学校」へ在籍
- 小4になり、「K第五小学校」の特別支援学級に転校
- その後は「児童養護施設S学園」に入所。中学校も「S学院中学校」へ進学(中学校は普通学級)
- 高校は、「公立サポート校入学(A第一高等学校)」へ進学
小学校だけで3つもあるので、なかなか大変そうです。上記を成年後見人Y氏にお伝えし、情報収集をお願いしました。
「果たして後見人で公立小学校の情報等がスムーズに集められるかは分からないが、やってみます」と仰ってくれました。
あとは、病院からの情報です。
ご本人が定期通院されている精神科クリニックに、診療情報提供書を求めました。
すると、「様式はそちらで用意して欲しい」と言われ、様式を、東京都心身障害者福祉センターのアドバイスを受けながら、職員が作成。クリニックから診療情報提供書を貰うことができました。
数か月後、Y後見人より情報収集完了のメールが届きました!
「S学園を中心に有益な情報が集められています。ただ、小学校は20年の保管期間が過ぎており、通信制高校は廃校しているため望み薄です」とのこと。
中学校、高校からは当時の成績や様子をまとめた文書が届き、S学園からは特に住んでいた当時の詳細な日誌やWAIS(知能検査)の結果、通知表などの資料をたくさん頂けました。
また、S学園の学園長A氏に愛の手帳の判定の際、同席して頂き、当時の様子を判定員の方に話して頂けないか確認し、了承を得ることもできました。
必要な書類と同席者がそろったところで、愛の手帳判定予約を取るため、東京都心身障害者福祉センター多摩支所へ電話しました。
利用者T様、S学園長、ラファミド職員で判定を受けに行き、今年(令和5年)の6月に無事、愛の手帳4級を取得できました!
Tさんが障害年金を希望されてから、実に7ヶ月のことです。
しかし、ゴールはまだ先、次はいよいよ障害年金受給に向けて、またひとつひとつ手続きを進めています!