その人に分かりやすい環境とやり方に「再」構造化支援

今回は、ラファミド八王子2棟に入居されているK様に行った「3つの再構造化」を紹介したいと思います。

K様は平成27年から入居されていて、統合失調症で、60歳、温和な人柄で、「居室の清潔さを保つために、定期的に掃除や洗濯を行う事ができている」が生活目標のひとつです。

スケジュールに沿った生活、居室の清潔保持、薬の飲み忘れを防ぐことなどにサポートが必要です。

構造化支援」は、情報や環境を整理して、理解しやすく、生活しやすくするやり方です。K様も服薬や掃除などがスムーズにできるよう構造化を行っていましたが、どうも上手くいかないことがあり、困っていました。

最近、構造化支援研修を受けて「情報をたくさんではなく分かりやすく、その人の生活をしやすいように整理をするためにはどうしたらいいか」と改めて考えたこともあり、K様に合わせた構造化をし直してみました。

 

①服薬管理

 1つ目は「服薬管理」です。ラファミド八王子の利用者様は、一日に複数回、数種類のお薬を飲まれている方も多いです。飲み忘れなどの不安がある方には、服薬管理の支援をしています。服薬の構造化は、お薬カレンダーやお薬ケースを使って行うことが多いです。

K様の場合も、よく使われている一週間分のお薬カレンダーを使っていました。

朝・昼・夕・寝る前の1日4回分を週に1回ご自分でセットし、服薬時間になったらスタッフルームに来てご自分で飲んでいただきます。職員は間違いなくセット、服薬できるか見守りをしています。

しかし、寝る前の薬の時間に間違って朝の薬を取ってしまうといったことが多く、飲み間違えたときは病院に連絡して支持を仰ぐことも度々ありました。また通院や毎週のお薬セットの時間も忘れてしまうことが多かったです。

何とかならないか…と考えていたのですが、ふと「お薬カレンダーからお薬を取るときの情報が多いので、間違えてしまうのではないか」と思いつきました。上からカバーをかぶせて、次に飲む薬だけを入れるポケットを作り、それ以外は見えないようにしてみました。

余計な情報を見えなくして「次はこれを飲む」とパッと見て分かる形にしました。

通院や毎週の薬セットの時間も忘れてしまうので、通院の日程や、薬セットの時間も分かるように追加して今の形になっています。

 

変えてから一年くらい経ちますが、毎回一個だけがセットしてあるので、他の薬と取り間違えることはなくなりました。

お薬の時間になったらご自分でスタッフルームに来て、飲んだら、次の薬を取り出して、ご自分でセットしてもらい、職員は見守る形で安定しています。

他にも取り間違えのある利用者様がいるので、最近3人の利用者様も同じような形にして、様子を見ています。

 

 ②スケジュール管理

2つ目は、「スケジュール管理」です。毎週、お薬のセット、居室の掃除、共用部分の掃除当番、通院、訪問看護といった予定があります。

一般的なスケジュール表を作り、お部屋にも貼ってありますが、スタッフルームに来る予定のときは、スケジュール通りの時間に来られないことが多く、職員が呼びに行くことが多いです。

居室の掃除も時間通りに職員が居室に行くと、「後でします」と始めず、職員が「時間なのでこちらでしますよ」と掃除を始めると「自分でできます」と掃除を始めるということが多いです。

スケジュールを忘れてしまい、本来できることもスムーズにできない、という状態でした。

これもお薬と同じく、「一週間間のスケジュール表では情報が多いのではないか」と思い、一週間から曜日ごとの一日のスケジュールに情報を少なくしてみることにしました。

水曜日は共用部掃除と訪問看護、日曜日は面談と居室掃除、というように曜日ごとの大切な予定とその時間をピックアップして提示する形に変えました。

服薬の時間も加えてお部屋に貼ってみたところ、数週間経ちましたが、服薬時間に職員が声を掛ける回数が減りました。まだ再構造化をしたばかりですが、効果ありの実感があるので、このまま続けて様子を見たいと思います。

 

 ③ゴミ捨ての習慣づけ

3つ目は「ゴミ捨て習慣」です。ラファミド八王子2棟では、食堂に共有のゴミ箱があり、ゴミがたまったら掃除当番がゴミ袋を交換して捨てることになっています。

各々の居室で出たゴミも、分別して共用のゴミ箱に入れてもらいます。

 

K様は、お部屋に自分用の冷蔵庫をお持ちで、買い物もよくされるので、ペットボトルや缶などもふくめ、ゴミがたくさん出る方です。捨てるのを面倒くさがりため込んでしまっていました。

お部屋には自分の大きいゴミ箱があるのですが、すぐにいっぱいになり、食堂で使う共用の大きなゴミ袋を勝手に居室で使用して、数日分たまってから捨てるという状況が続いていました。

「毎日ゴミを捨てるように」と声掛けをしたのですが、改善は見られません・・・。

週一回来る訪問看護師からも、「ゴミが多いので、もっと小さいゴミ袋を買ってためないようにしてはどうか」と提案されました。

そこで、小さな透明なゴミ袋をご自分で購入していただき、これまでよりもたまったことが分かりやすいようにゴミの「見える化」をしました。

しかし、ゴミを入れても床に置いてしまい、ゴミ袋の上に次のゴミ袋を重ねて、結局ため込んでしまうことが続きました。

ゴミ袋には入れられるけれど、そこから「捨てる」ことがなかなかできない、という状態です。

「どうすれば、ゴミを毎日捨てられるようになるか?」を考えて、ゴミ袋を決まった一ヶ所にまとめて、吊り下げることで、いっぱいになったのもパッと見て分かりやすくしました。

「食べるのが好きな方なので、冷蔵庫を開けたときに必ず目に付くところにゴミ袋を下げたらいいのではないか」と考え、お部屋の冷蔵庫の扉にペットボトル・缶用の透明な袋と、普通の可燃ゴミ用の袋をつけて、袋がいっぱいになったら捨てるという方法にしました。

これを続けて「その日のゴミはその日に捨てる」習慣が定着すればいいと思いました。

一ヶ月ほど続けましたが、ゴミ袋がいっぱいになると自発的に袋を縛って食堂のゴミ箱に捨てていることが多くなり、大きいゴミ袋に入れる回数が少なくなりました。

お部屋を見せていただくと、昨日の夜に捨てて、今日は半分くらい缶ペットボトルが入っている状態になっていました。

床にはもうゴミは置いていないので、お部屋も以前よりきれいになりました。

お部屋のゴミ箱ももういらないので捨てましょうと提案してみましたが、捨てないとご本人が言うので形だけ置いている状態です。

 

ご本人の記憶に残るよう情報を必要最小限にすること、目で見て分かりやすくすること、ご本人が認識しやすい場所ややり方を考えて実行してみました。

「構造化」というとカッチリしたイメージの言葉に聞こえますが、その人その人に合ったやり方、環境に整理していくことで、決まった形に当てはめることではありません

今後も、新しいやり方がK様に定着できそうか様子を見ていき、他の利用者様にも使えそうなことは再構造化を試していきたいと思います。

 

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